不登校に陥る子どもの中には、発達障害を抱えているケースが少なくありません。
発達障害児による不登校の問題を解決するためには、まず発達障害とはどういうものなのかについて理解を深めておく必要があります。
発達障害とは?
発達障害とは、生まれつき脳の発達に何らかの問題を抱えた障害の総称です。
幼い頃から他の子どもと比べて行動や感情に大きな違い・特徴があり、それによってしばしば学校等の集団生活に支障をきたす場合があります。
発達障害には様々な種類があり、代表的なものが以下となります。
- 学習障害(LD)
- 注意欠如多動性障害(ADHD)
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- チック症
- 吃音症
以上のうち、不登校の原因として特に多いのが1~3の「学習障害(LD)」「注意欠如多動性障害(ADHD)」「自閉スペクトラム症」です。
この3つの発達障害について、それぞれの症状について解説していきましょう。
学習障害(LD)
学習障害(LD)は、字の読み書きや数字の計算などの特定の学習が困難になる状態のことをいいます。
学習障害では全般的な知的発達の遅れは見られないため、歯を磨いたり、お風呂に入ったり、服を着替えたり…など日常的な動作や思考は問題なく行えます。
しかし学びの場において、本を読んだり計算ドリルを解いたり…といった場面になると、途端に何もできなくなる症状が現れるのです。
学習障害への対処
学習障害は、一般的な方法での学習に支障を来たすというだけで、学習そのものが全く不可能になるというわけではありません。
フリースクール等の不登校支援の機関では、学習障害の子どもに向けた独自の学習方法を用意されていることもあります。
例えば読み書きができない場合は、大きく書かれた文字を指でなぞりながら読ませたり、担当講師が書き順をナビゲートしながら絵を描く感覚で文字を書かせたり……など様々な工夫をして学習障害を克服します。
注意欠如多動性障害(ADHD)
ADHD(注意欠如多動性障害)は、「不注意」や「多動・衝動性」などの特徴が顕著に見られる状態のことをいいます。
落ち着きがなく「待つ」ということができない、集中力が持続しない、注意が散漫になりがち、細かい作業ができない……などの傾向が見られれば、ADHDの可能性が考えられます。
上記の特徴は乳児期~幼児期まではどんな子にも見られますが、ほとんどの場合は小学校に入学して精神的に成長するにつれて落ち着いてくるものです。
そのため、小学校中学年~高学年になっても改善の兆しが見られなければ専門医に相談するのが好ましいでしょう。
注意欠如多動性障害への対処
ADHDの対処と克服は、とにかく子どもが一つのことに集中できる環境をつくることに尽きます。
例えば部屋にゲームやマンガなど注意を散らす原因となるものは目の届かない場所に移動させ、小さなことでもきちんと褒める・ご褒美を与える等モチベーションを高めることです。
ただ、ADHDは元々集中力が長く続かない疾患のため、いきなり最初から長時間の勉強や多くの作業をさせるのはNG!
辛抱強く、少しずつできることを増やし、できる時間を伸ばしていくことが重要です。
やることを増やす際には、「何を、どの順番でやるのか」を明確に示してあげるようにしましょう。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症では、言葉や表情、身振り手振りなどを用いたコミュニケーションが極端に苦手という特徴が見られます。
他人との対話の場で、不自然に無言・無表情だったり、そもそもコミュニケーションを取ろうという意思が見られない場合、この自閉スペクトラム症が疑われます。
また、行動原理や関心の対象、動作のパターンがきわめて限定的であり、人間関係を広げたり新しいことに挑戦したりすることに対して強い拒絶反応を示すケースも見られます。
自閉スペクトラム症への対処
自閉スペクトラム症の原因は未だ特定されておらず、根本的な治療法も見つかっていないのが現状です。
しかし、周囲の環境を整えることで克服への足がかりになることがあります。
その一つが「苦手な刺激を減らす」です。
苦手な人・音・景色など、その子が強いストレスを感じやすいものを極力遠ざけ、刺激を受けない環境で生活させることが第一歩です。
ほかにも「物事を伝えるときは具体的に、視覚的にわかりやすく」という点も重要です。
例えば「ちょっとそれ取って」という曖昧な指示は混乱とストレスを招きやすいため、「テーブルの上のソースを取って」と具体的に示します。
勉強をするときは、「今日は算数をやるよ!」と言葉で言うよりは、教科書を見えてどの部分の勉強をするのかを示します。
こういった工夫で、自閉スペクトラム症の子どもも生きづらさを感じにくくなり、克服へのきっかけを掴むことができます。
最後に
発達障害は、いずれも治療が難しく周囲の長期的なサポートが必要になる障害です。
それでも、病状が緩和して問題なく社会で暮らしていけるようになった人も珍しくありません。
問題なのは発達障害を抱えたその子自身ではなく、その子を取り巻く人間や環境です。
発達障害をどのように乗り越え、どのように成長し、どのような人生を歩んでいくかは見守る立場の保護者や教育者に委ねられています。
不登校で発達障害の子どもと向き合うのに疲れてしまった……
そんな時は専門医に相談のもと、不登校支援を実施するフリースクールに通わせるのも一つの手と言えるでしょう。