お役立ちコラム

【取材】不登校の長男を持つ母親の苦悩とカウンセリング

【取材】不登校の長男を持つ母親の苦悩とカウンセリング

今回は、かつて不登校のお子様に悩まされていた小村様にお話をお伺いする機会がありましたので、こちらでご紹介したいと思います。

家事と育児の両立、そして長男の反抗

「良い母親でなければならない。良い嫁でなければならない」
嫁いでからずっとそう思っていました。同居している姑の言葉は絶対で…、育児と家事に支障が出ない程度で仕事してもよい。
そんな条件で始めた仕事。
もちろん、何もかも一人で抱え込んで、やって当たり前の毎日。

長男が中学生になり、いわゆる不良グループと関わりを持ち始めた頃も随分、姑や夫から責められました。
中3になって不登校になったときには、絶望しかありませんでした。

どうして「普通の子」のように育たなかったのだろう。
「母親の私のせいなんだ」と自分を責め、長男が私の思い描くような高校生にならないことに苛立ち、感情的に怒り、喧嘩ばかり。
ピリピリと緊張感でいっぱい、笑顔のない家庭となっていました。

一度はスクールカウンセラーに相談したが…

学校に勧められてスクールカウンセラーと面談もしましたが、「お母さんが頑張りすぎ。一回、倒れてみたらいいですよ。強い親には敵わないと思っているから息子さんが伸びない」
などと言われ更に自分を責め続けました。

家庭がそんな状況なので、逃げるように仕事に力を入れました。結果、そちらの方では次々と結果を出し成績を伸ばしていきました。
そうなると更に仕事に目が向き、家庭の問題から目を背け、状況は最悪でした。

次男への影響と母親の苦悩

どうにかギリギリのラインの高校に進学できたものの、私にとっては「失敗」した子供として長男に接していました。
次男もそんな私と兄の様子を間近で見ていて、影響を受けたのでしょう。
常に反抗的で対話もないまま、それなりに高校進学したものの、特進コースについていけず一年生半ばで学校にいけなくなってしまいました。

ギリギリの単位数でどうにか卒業したものの、世の中を斜めに見るような子だと私も腫れ物に触れるような接し方しかできませんでした。

次男は大学卒業後一流企業に無事就職し、私たちが喜んだのも束の間、たった三ヶ月で「この会社のやり方には納得できない」といって退職してしまい、「我慢が足りない子に育ててしまった」とまた自分を責めました。
私は自分の子育ては失敗だとずっと重たい鉛のような思いを抱えて過ごしてきました。
そんな私が、ある日とある不登校専門塾のカウンセリングに参加する機会があり、そこで様々な気付きを得ました。

不登校や問題児との向き合い方

子どもたちの人生は彼ら自身のもの。私は「こうなっってほしい」「こうあるべき」と私自身が持っている思いに沿わないことに落胆していたに過ぎないのだと。
そのことが腑に落ちたとき、彼らそれぞれが自分の思うように選択し、歩いていく道を見守ろうと本心から思えるようになりました。

彼たちを信じること。そしてその思いは私の言動もどんどん変化させていったようです。

カウンセリングによる影響と心境の変化

ある日、次男がポツンと「おかん、変わったな。前はそんなこと絶対言わんかったのに」と。
それから、少しずつ私と話をするようになりました。

色々聞くと、退職の件も、歴史のある同族企業の経営状況の危うさを彼は感じたんだなと、そう私は理解しました。
彼は自分がこのままでは駄目になると自身で判断して自ら会社に見切りをつけたのでした。

私はそんな判断をできた次男をすごいな、よく頑張ったねと心から思えました。
親子であると同時に対等なヒトとしての関係であることに気付きました。
今、次男は慎重に再就職活動をしているようですが、私は干渉することなく信じて見守るのみ。

かつて不登校だった長男も…

一方、数々の「問題行動」で私に多くの心労を与えてきた長男は介護士となりました。当初は「どうせ長続きしないだろう」と思っていたのですが、転職することなく今も続いています。
彼のやりたいように、彼の人生は彼自身のものなんだから、と思えるようになった頃、長男とも本音で話をするようになりました。

高齢者の介護を仕事に選んだ理由やこれからのビジョン、また職場…介護士の労働状況に問題意識を持っていることなど、様々なことを伝えてくれるようになりました。

しっかり勉強して、いい高校、いい大学に進み、一流企業か公務員で一生アンパイに生きてほしい…などと思い、その道に進まなかった子どもたちは失敗だなんて思っていたなんて、今では笑い話のようです。

カウンセリングで変わる世界がある

私の勝手な思い込みで物事を図っていたことに気づいたら、姑や夫から言われることも嫌味だとは思わなくなりました。
「ああ、なるほど。この人はこんな風に思っているんだな」、と。ただそれだけのこと。
非難されていると解釈する癖を自覚したら、本当に楽になりました。

私が変われば、まわりも一瞬にして変わる。これは本当に驚きを持って実感しています。
そして…ある日、長男と話ししている時の一言。
「オカンさ、ほんまに頑張っていると思うで」
私にとって最高のプレゼントとなりました。